Japanische Klassiker mit Furigana
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ほうえいふんか
宝永噴火
岡本 かの子
Lesen Sie 宝永噴火 (ほうえいふんか) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 31.505 Zeichen · 62 Bildschirme
やっと、それを止めたのは激烈な憎みだった。誰がこんなに自分を生涯一度も覚えたことのない卑怯な気持にさすのか。何が、自分をこうも情無く圧迫するのか。憎みに力を添えられて辛うじて座禅の形を続けていると収縮した毛穴から干からびた皮膚へ油汗がたらたらと押し出て全身が痛いようだった。激しい地震の時には坐禅の両手を腹の前で重ね合わしていることが出来なくて寺の縁板の左右へ思わず突出して支えたりした。これではならぬと強いて指を組み合せ、動く庭を睨み据えた。車前草の間を蟻が右往左往しているのが眼の中に閃めきながら身体は右へ左へと転んだ。そのたびに彼は肘で縁板を弾ねて起上った。
二十三日の朝、今までにない大音響と共に富士の腰から煙の渦巻が噴き上ったときに、彼は思わず眼を開いてあたりを見廻し、それを見付けると、何事か判らないが少くともこの異変が富士全山に関係あることを直覚した。すると彼の憎みは目当てが出来たので、俄にそれへ注がれた。憎みは強い怒りとなってかの煙に注がれた。みるみる身体が熱くなって今迄に覚えない逞しい生気が脊髄を突き上げて来た。おお! 富士が生きていて活気を吐いているのだ。