Japanische Klassiker mit Furigana
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いえ
家
島崎 藤村
Lesen Sie 家 (いえ) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 126.748 Zeichen · 254 Bildschirme
「房ちゃんですか」と言って、お種は窓から顔を出して、「房ちゃん……お土産が有りますよ……」
「ヨウ、日に焼けて、壮健そうな児だわい」と達雄も快濶らしく笑った。
お種は窓越しに一寸でもお房を抱いてみたいという風であったが、そんなことをしている時は無かった。彼女はいそがしそうに、子供へと思って用意して来た品々の土産物を取出して、弟夫婦へ渡した。
「ずっと東京の方へ御出掛ですか」と三吉が聞いた。
「いや、東京は後廻しです」と達雄は窓につかまって、「私だけ東京に用が有りますから、先ず家内を送り届けて置いて……今度の様に急ぎませんとね、お種もいろいろ御話したいんでしょうけれど――」
「お雪さん、ゆっくり御話も出来ないような訳ですが、今度は失礼しますよ――いずれ復たお目に掛りますよ」とお種も言った。
お雪は二番目のお菊を抱きながら会釈する、お種は車の上からアヤして見せる、碌に言葉を交す暇もなく、汽車は動き出した。
お種が窓から首を出して、もう一度弟の家族を見ようとした頃は、汽車は停車場を離れて了った。田舎の子供らしく育ったお房の紅い頬、お菊を抱いて立っているお雪の笑顔、三吉の振る帽子――そういうものは直にお種の眼から消えた。