Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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いえ

家

島崎 藤村

Lesen Sie 家 (いえ) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 126.748 Zeichen · 254 Bildschirme

Aozora Bunko

赤羽で乗替えて、復た東海道線の列車に移った頃は、日暮に近かった。達雄はすこし横に成った。お種はセル地の膝掛を夫に掛けてやって、その側で動揺する車の響を聞いた。寝ても寝られないという風に、達雄は間もなく身を起したが、紳士らしい威厳のあるその顔には何処となく苦痛の色を帯びていた。彼は、眼に見ることの出来ないある物に追われているような眼付をした。

「どうか成さいましたか」とお種は心配顔に尋ねてみた。「都合が出来ましたら、貴方もすこし伊東で保養していらしったら……」

「どうして、お前、そんなユックリしたことが言っていられるもんじゃない」と達雄が言った。「東京で用達をして、その模様に依っては直に復た国の方へ引返さなけりゃ成らん……俺は今、一日を争う身だ……」

達雄は祖先から伝わった業務にばかり携わっていることの出来ない人であった。彼は今、郷里の銀行で、重要な役目を勤めている。決算報告の期日も既に近づいている。

車中の退屈凌ぎに、お種は窓から買取った菓物を夫に勧めた。達雄はナイフを取出して、自分でその皮を剥こうとした。妙に彼の手は震えた。指からすこし血が流れた。