Japanische Klassiker mit Furigana
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さむはし
寒橋
山本 周五郎
Lesen Sie 寒橋 (さむはし) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.416 Zeichen · 36 Bildschirme
「――今年の五月だったと思うが……」
「そう、五月ね、それを聞いておかなくっちゃあ、……だって知らん顔をしているわけにはいかないでしょ、お産するとなればいろいろ、……あたしとしたって、してあげなければならないことがあるし、……でもわかってよかったわ、あたしちっとも知らなかったんですもの、よっぽどばかでぬけてるのね」
「――お孝、おれが悪かった」
時三は顔をあげてお孝を見た。きれいな澄んだ眼に涙が溜まっていた。
「――魔がさしたんだ、……まちがいだったんだ、本当に悪かった、勘弁して呉れ」
「いいわよ、もういいのよ、誰にだってまちがいということはあるわ、あたしだって、……あら、お父つぁんが呼んでるんじゃないかしら」
お孝はあたふたとそこを立った。
良人の前ではとうとう泣かずに済んだ。恨むこともできなかった。そしてそれから二三日は気分も明るく、ふだんと同じように笑ったり、陽気にお饒舌りをしたりした。……だが或る夜、良人が自分の夜具へ手をかけたとき、その瞬間、お孝は激烈な嘔きけを感じ、お勝手へいって、嘔こうとして、こんどはとつぜん胸をずたずたにひき裂かれるような、非常な苦悶と絶望におそわれ、呻き声をあげてそこへ倒れた。