Japanische Klassiker mit Furigana
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かんえいぶどうかがみ
寛永武道鑑
直木 三十五
Lesen Sie 寛永武道鑑 (かんえいぶどうかがみ) von 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.633 Zeichen · 26 Bildschirme
玄関に、夫を出迎える召使の声を聞いて、縫物を、押入れへ入れて、廊下へ出ようとすると、もう其処に、夫の姿があった。
「お帰り遊ばしませ」
里恵は、こう云って、ちらっと夫の顔を見たが、夫の表情は、いつもの日と、同じようであった。
(今日も、よかった)
里恵は、夫の性質を知っているだけに、何時、助太刀に立とうと云い出すか、知れないのを恐れもし、諦めてもいた。諦め切れぬ思いを、諦めようとして、夫の周囲に立った噂を聞いた日から、半兵衛と同じように――いいや、半兵衛以上に、心の中で、夫と別れる時の事を考えては、苦しんでいた。
その別れは、生別であり、死別であった。戸田の家中の使手として、海道にも響いている夫が、又五郎の妹婿であるというだけで、――自分につながる縁というだけで、生死の判らぬ旅+出て――。
里恵は、又五郎を兄としていたが、好ましい兄だとは、思っていなかった。里恵にとって、兄と夫との比較は、他人と、自分との比較と同じようなものであった。ただ一人の男の子として、父母に可愛がられていた我儘な兄、三人の女姉妹の中の子として、一番誰よりも、うとんぜられていて、早く出て行け、と云わんばかりにして、半兵衛の所へ嫁がされた記憶。