Japanische Klassiker mit Furigana
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どんぐり
寺田寅彦随筆集 第一巻
寺田 寅彦
Lesen Sie 寺田寅彦随筆集 第一巻 (どんぐり) von 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.161 Zeichen · 412 Bildschirme
車屋のばあさんなどは「もうスッカリ御全快だそうで」と、ひとりできめてしまって、そっとふところから勘定書きを出して「どうもたいへんに、お早く御全快で」と言う。医者の所へ行って聞くと、よいとも悪いとも言わず、「なにしろちょうど御姙娠中ですからね、この五月がよほどお大事ですよ」と心細い事を言う。
それにもかかわらず少しずつよい。月の十何日、風のない暖かい日、医者の許可を得たから植物園へ連れて行ってやると言うとたいへんに喜んだ。出かけるとなって庭へおりると、髪があんまりひどいからちょっとなでつけるまで待ってちょうだいと言う。ふところ手をして縁へ腰かけてさびしい小庭を見回す。去年の枯れ菊が引かれたままで、あわれに朽ちている、それに千代紙の切れか何かが引っ掛かって風のないのに、寒そうにふるえている。手水鉢の向かいの梅の枝に二輪ばかり満開したのがある。近づいてよく見ると作り花がくっつけてあった。おおかた病人のいたずららしい。茶の間の障子のガラス越しにのぞいて見ると、妻は鏡台の前へすわって解かした髪を握ってぱらりと下げ、櫛をつかっている。ちょっとなでつけるのかと思ったら自分で新たに巻き直すと見える。