Japanische Klassiker mit Furigana
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どんぐり
寺田寅彦随筆集 第一巻
寺田 寅彦
Lesen Sie 寺田寅彦随筆集 第一巻 (どんぐり) von 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.161 Zeichen · 412 Bildschirme
くやしいので懸命に登りかけると、砂は足もとからくずれ、力草と頼む昼顔はもろくちぎれてすべりおちる。
砂山の上から賊軍が手を打って笑うた。
しかしどうしても登りたいという一念は幼い胸に巣をくうた。
ある時は夢にこの天文台に登りかけてどうしても登れず、もがいて泣き、母に起こされ蒲団の上にすわってまだ泣いた事さえあった。
「お前はまだ小さいから登れないが、今に大きくなったら登れますよ」と母が慰めてくれた。
その後自分の一家は国を離れて都へ出た。
執着のない子供心には故郷の事は次第に消えて昼顔の咲く天文台もただ夢のような影をとどめるばかりであった。
二十年後の今日故郷へ帰って見るとこの広場には町の小学校が立派に立っている。
大きくなったら登れると思った天文台の砂山は取りくずされてもう影もない。
ただ昔のままをとどめてなつかしいのは放課後の庭に遊んでいる子供らの勇ましさと、柵の根もとにかれがれに咲いた昼顔の花である。
二 月見草
高等学校の寄宿舎にはいった夏の末の事である。
明けやすいというのは寄宿舎の二階に寝て始めて覚えた言葉である。
寝相の悪い隣の男に踏みつけられて目をさますと、時計は四時過ぎたばかりだのに、夜はしらしらと半分上げた寝室のガラス窓に明けかかって、さめ切らぬ目にはつり並べた蚊帳の新しいのや古い萌黄色が夢のよう