Japanische Klassiker mit Furigana
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どんぐり
寺田寅彦随筆集 第一巻
寺田 寅彦
Lesen Sie 寺田寅彦随筆集 第一巻 (どんぐり) von 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.161 Zeichen · 412 Bildschirme
夏の山路を旅した時の事である。
峠を越してから急に風が絶えて蒸し暑くなった。
狭い谷間に沿うて段々に並んだ山田の縁を縫う小道には、とんぼの羽根がぎらぎらして、時々蛇が行く手からはい出す。
谷をおおう黒ずんだ青空にはおりおり白雲が通り過ぎるが、それはただあちこちの峰に藍色の影を引いて通るばかりである。
咽喉がかわいて堪え難い。
道ばたの田の縁に小みぞが流れているが、金気を帯びた水の面は青い皮を張って鈍い光を照り返している。
行くうちに、片側の茂みの奥から道を横切って田に落つる清水の細い流れを見つけた時はわけもなくうれしかった。
すぐに草鞋のまま足を浸したら涼しさが身にしみた。
道のわきに少し分け入ると、ここだけは特別に樫や楢がこんもりと黒く茂っている。
苔は湿って蟹が這うている。
崖からしみ出る水は美しい羊歯の葉末からしたたって下の岩のくぼみにたまり、余った水はあふれて苔の下をくぐって流れる。
小さい竹柄杓が浮いたままにしずくに打たれている。
自分は柄杓にかじりつくようにして、うまい冷たいはらわたにしむ水を味おうた。
少し離れた崖の下に一株の大きな野ばらがあって純白な花が咲き乱れている。