Japanische Klassiker mit Furigana
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どんぐり
寺田寅彦随筆集 第一巻
寺田 寅彦
Lesen Sie 寺田寅彦随筆集 第一巻 (どんぐり) von 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.161 Zeichen · 412 Bildschirme
今でも城山の奥の茂みに蒸された朽ち木の香を思い出す事ができるのである。
いつか城山のずっとすそのお堀に臨んだ暗い茂みにはいったら、一株の大きな常山木があって桃色がかった花がこずえを一面におおうていた。
散った花は風にふかれて、みぎわに朽ち沈んだ泥船に美しく散らばっていた。
この木の幹はところどころ虫の食い入った穴があって、穴の口には細かい木くずが虫の糞と共にこぼれかかって一種の臭気が鼻を襲うた。
木の幹の高い所に、大きなみごとなかぶと虫がいかめしい角を立てて止まっているのを見つけた時はうれしかった。
自分の標本箱にはまだかぶと虫のよいのが一つもなかったので、胸をとどろかして網を上げた。
少し網が届きかねたがようよう首尾よく捕れたので、腰につけていた虫かごに急いで入れて、包みきれぬ喜びをいだいて森を出た。
三の丸の石段の下まで来ると、向こうから美しい蝙蝠傘をさした女が子供の手を引いて木陰を伝い伝い来るのに会うた。
町の良い家の妻女であったろう。
傘を持った手に薬びんをさげて片手は子供の手を引いて来る。
子供は大きな新しい麦藁帽の紐をかわいい頤にかけてまっ白な洋服のようなものを着ていた。