Japanische Klassiker mit Furigana
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からすうりのはなとが
寺田寅彦随筆集 第三巻
寺田 寅彦
Lesen Sie 寺田寅彦随筆集 第三巻 (からすうりのはなとが) von 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 213.804 Zeichen · 425 Bildschirme
からすうりの花と蛾
ことしは庭のからすうりがずいぶん勢いよく繁殖した。中庭の四つ目垣のばらにからみ、それからさらにつるを延ばして手近なさんごの木を侵略し、いつのまにかとうとう樹冠の全部を占領した。それでも飽き足らずに今度は垣の反対側のかえでまでも触手をのばしてわたりをつけた。そうしてそのつるの端は茂ったかえでの大小の枝の間から糸のように長くたれさがって、もう少しでその下の紅蜀葵の頭に届きそうである。この驚くべき征服欲は直径わずかに二三ミリメートルぐらいの細い茎を通じてどこまでもと空中に流れ出すのである。
毎日おびただしい花が咲いては落ちる。この花は昼間はみんなつぼんでいる。それが小さな、かわいらしい、夏夜の妖精の握りこぶしとでもいった格好をしている。夕方太陽が没してもまだ空のあかりが強い間はこのこぶしは堅くしっかりと握りしめられているが、ちょっと目を放していてやや薄暗くなりかけたころに見ると、もうすべての花は一ぺんに開ききっているのである。スウィッチを入れると数十の電燈が一度にともると同じように、この植物のどこかに不思議なスウィッチがあって、それが光のかげんで自働的に作用して一度に花を開かせるのではないかと思われるようである。