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Japanische Klassiker mit Furigana

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あひるとさる

寺田寅彦随筆集 第五巻

寺田 寅彦

Lesen Sie 寺田寅彦随筆集 第五巻 (あひるとさる) von 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 194.515 Zeichen · 389 Bildschirme

Aozora Bunko

測夫の一人はもう四十年も昔からこの仕事をつづけているそうで、北はカラフトから南は台湾まで足跡を印しない土地は少ないのだそうである。テントの中で昼食の握り飯をくいながら、この測夫の体験談を聞いた。いちばん恐ろしかったのは奄美大島の中の無人の離れ島で台風に襲われたときであった。真夜中に荒波が岸をはい上がってテントの直前数メートルの所まで押し寄せたときは、もうひと波でさらわれるかと思った。そのときの印象がよほど強く深かったと見えて、それから長年月の後までも時々夢魔となって半夜の眠りを脅かしたそうである。また同じ島に滞在中のある夜琉球人の漁船が寄港したので岸の上から大声をあげて呼びかけたら、なんと思ったかあわてて纜をといて逃げうせ、それっきり帰って来なかったそうである。カラフトでは向こうの高みから熊に「どなられて」青くなって逃げだしたこともあるという。えらい大きな声をして二声「どなった」そうである。

テント内の夜の燈火は径一寸もあるような大きなろうそくである。風のあるときは石油ランプはかえって消えやすくていけないそうである。

なんの気なしにもらって飲んだお茶の水は天気のいい時は峰の茶屋からここまでかつぎ上げなければならぬ貴重なものである。