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Japanische Klassiker mit Furigana

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あひるとさる

寺田寅彦随筆集 第五巻

寺田 寅彦

Lesen Sie 寺田寅彦随筆集 第五巻 (あひるとさる) von 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 194.515 Zeichen · 389 Bildschirme

Aozora Bunko

あるひどい雨の日の昼ごろにたずねて来たときは薄絹にゴムを塗った蝉の羽根のような雨外套を着ていたが、蒸し暑いと見えて広くはげ上がった額から玉のような汗の流れるのをハンケチで押しぬぐい押しぬぐい話をした。細かい灰色のまばらな髪が逆立っているのが湯げでも立っているように見えた。その時だけは顔色が美しい桜色をして目の光もなんとなく生き生きしているようであった。どういうものかそのときの顔がいつまでもはっきり自分の印象に残っている。

一度S軒に呼ばれて昼飯をいっしょにごちそうになったときなども、なんであったか忘れたが学問には関係のないおどけた冗談を言ったりして珍しい笑顔を見せたこともあった。

ある日少しゆっくり話したいことがあるから来てくれと言って来たのでさっそく行ってみると、寝巻のまま寝台の上に横になっていた。少しからだのぐあいが悪いからベッドで話すことをゆるしてくれという。それから、きょうはどうもドイツ語や英語で話すのは大儀で苦しいからフランス語で話したいが聞いてくれるかという。自分はフランス語はいちばん不得手だがしかしごくゆっくり話してくれればだいたいの事だけはわかるつもりだと言ったら、それで結構だと言ってぽつぽつ話しだしたが、その話の内容は実に予想のほかのものであった。