Japanische Klassiker mit Furigana
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ちいさきいえのせいかつ
小さき家の生活
宮本 百合子
Lesen Sie 小さき家の生活 (ちいさきいえのせいかつ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.540 Zeichen · 18 Bildschirme
引越しの日は、晴れて暑い残暑の太陽が、広い駒込の通りを、かっと照して居た。
午前中本箱や夜具、トランク類を、石井の荷物自動車にのせ、英男が面白がって後につかまって送って行った。大工、善さん、おまつ等がAに手伝い、略、片がついたと思う頃、自分は俥で出かけた。
始めて出来た自分等の家に行くのだけれども、母上に
「左様なら」
と云う心持にはなれない。改ったことを云うと、今にも涙がこぼれそうに感じ、二階に居られる処へ行って軽く
「行って参ります」
と云い、何も返事を得ない先に、いそいで玄関から俥に乗った。
始め、此家が今に空くのだそうだ、と云うので、赤門前の男から知らされ、まだ、人が住んで居た時分、或夜、見に来た事があった。
勿論中へは入れない。崖の上の狭い平地の隅から、低い板塀越しに、中をちらりと覗いた丈であった。後、もう一遍、来たことがある。いずれも夜であった。従って、周囲の有様や、家そのものの感じも、あまり露骨に見えなかった。
処が、只さえ万物を乾き、美しくなく見せる残暑の真昼の中で俥から下りると、自分は、殆ど、一種の極り悪さを感じる程、家は小さく、穢く異様に見えた。