Japanische Klassiker mit Furigana
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ちいさなやぎのきろく
小さな山羊の記録
Lesen Sie 小さな山羊の記録 (ちいさなやぎのきろく) von Sakaguchi Ango (坂口 安吾) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.402 Zeichen · 19 Bildschirme
こういう不思議な案内人に導かれて、私は富士見のサナトリウムへ行った。この案内人は、生れ故郷の四周にそそり立つあらゆる山々の名も知らなかった。こうして、私はそれ以来、時々富士見へ出かけたが、この案内人の水際立った不思議さが、結局、何よりの取柄であったようだ。ほかの思い出は、苦しいことばかりであった。
然し、富士見のサナトリウムの患者たちは、私の訪れをいつもあたゝかく迎えてくれた。疲れきった私は、病人に同情され、病人が看護婦をつれてきて、葡萄糖やビタミンの注射を打ってくれたりしたが、透きとおるような皮膚をした青年たちと食事をしたりしていると、一そうこの山々がなつかしく、都会がうとましく思われるのであったが、皮膚のすきとおる青年たちは一様に山々を呪い、都会にアコガレをよせていたが、その思いは、まことに激しく、目覚ましいものであった。
私は精神病院へ入院して、やがて病人たちを観察しはじめたとき、いつも比較的に富士見の皮膚のすきとおる患者たちを思いだしたが、精神病院にも同じ年ごろの分裂病の患者たちがいて、彼らも一様に病院を呪い、病気を呪い、鉄格子の外へ脱出したがっていたが、帰する思いは非常に違っていたようである。