Japanische Klassiker mit Furigana
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こさかいふぼくしスケッチ
小酒井不木氏スケッチ
国枝 史郎
Lesen Sie 小酒井不木氏スケッチ (こさかいふぼくしスケッチ) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 5.809 Zeichen · 12 Bildschirme
只外科医と違う所は、メスの代りに舌を用い、手を下さずに患者自身をして、勝手に引き出させる点にある。氏の慇懃丁寧なる、もし書斎のデスクの上へ、迂濶り腸を忘れて行こうものなら、後から小包郵便にして、添手紙と共に送り返される。腸ならまだしも結構である、曾て私は数枚の懐紙を、置き忘れて帰ったことがあった。然るに次回の訪問の際、氏は夫れを遺留品として、懇切に手渡して下された。
二分程椅子から前へいざり、背を丸めて顔を下げ、小声を一層小声にし、氏が若し話を仕掛けたら、訪問者は説得されるものと、予め覚悟をしなければならない。と云うのは然ういう態度で、話し出された其時こそ、自説を述べられる時だからである。しかし然ういう場合にも、極わめて婉曲な云い廻わし方をされる。「こう書籍にありました」「斯うある人が云って居ります」つまりこんなように云われるのである。これは露骨な自己拡張を、欲しない人の態度である。科学者が科学に立脚し、押し立てた説を崩そうとするなら、その科学者と同等か、同等以上の科学者で無ければ、企て及ばないことである。で私は然ういう場合には、きまって背広の襟を正す。