Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
あきかぜとはは
尾崎士郎短篇集
尾崎 士郎
Lesen Sie 尾崎士郎短篇集 (あきかぜとはは) von 尾崎 士郎 (おざきしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.032 Zeichen · 216 Bildschirme
背の高い男が、往来に面した事務机に倚りかかって、一束のハガキにスタンプを押しているのであった。その男はわたしの入っていったことにまるで気をとめていないようであった。まだ十五、六と思われる木綿の棒縞の単衣に裾短かく袴を穿いた小さい事務員が区分棚の前に立っていた。彼はちらっとわたしを見たがその儘視線を横へ外らせた。突きあたりの格子戸に隔てられた交換室から若い女の忍び笑うような声が聞えた。机にも椅子にも見覚えがあった。だがすべてが見馴れた光景でありながら、この室の中の空気が自分にとって急に冷たくなってしまったような気がした。
左側の壁とすれすれに置いてある兄の机の上には五、六冊の出納簿が重ねてあり、その上に黒い革の巻煙草入が口をあけたままで載せてあった。そこには今まで誰かがいたことを思わせる煙草の吸殻が、かすかな煙を立てて灰皿の中にころがっていた。
古さびた出納簿の赤茶けた表紙の色がわたしを惹きつけた。それは、父と兄とが数年前に一冊の開かれた出納簿をまん中にして向い合っていた一夜の情景を、太い綱をもって手繰り寄せるように、次第に鮮かな形を示してわたしの頭の中に映じだした。