Japanische Klassiker mit Furigana
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あきかぜとはは
尾崎士郎短篇集
尾崎 士郎
Lesen Sie 尾崎士郎短篇集 (あきかぜとはは) von 尾崎 士郎 (おざきしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.032 Zeichen · 216 Bildschirme
しかし、此処で舟形とはなしているともう事件は疾っくに通り去ってしまったような気もちになり、考えようによっては朝飯も喰べずに家をとびだしてきた自分が多吉と同じ幻影におびやかされているようにも思われてきたが、「とにかく雪見酒で景気をつけてから出かけようよ、どうジタバタしたところで今から仕方がないんだから」と言いながらニタリと笑う舟形の顔を見ると、急に一刻もじっとしていられないような焦躁に襲われるのであった。もう一本もう一本と何時の間にか腰を落ちつけて飲み出そうとする舟形を無理にせきたてるようにして外へ出たのは正午少し前で、雪はもうすっかりやんではいたが灰色の空は前よりも一層重苦しい色に掩われ雪の道は歩くごとにつるつるとすべるほど氷りついていた。市場の前から出るバスで国道へ出て通りかかった円タクに乗換えると、「やりましたね」――と若い運転手がはずみのついた声でうしろを振りかえった。何時何分に誰が殺されて誰が助かったというはなしを彼は得意そうにまくしたてたあとで、「どうなりますかね、これからの日本は?」
伍一がだまっていると彼はあの大蔵大臣だけは生かしておきたかったとか、こんなにバタバタやられたんじゃあ今に大臣になり手がなくなるんじゃないかと、ひとりごとのように呟いていたが、自動車が東京へちかづくにつれて窓にうつる