Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
あきかぜとはは
尾崎士郎短篇集
尾崎 士郎
Lesen Sie 尾崎士郎短篇集 (あきかぜとはは) von 尾崎 士郎 (おざきしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.032 Zeichen · 216 Bildschirme
「うれしいって、――一向うれしそうでもないじゃないか?」
「そりゃあ」
と、百合はしなだれかかるように肩をすぼめて、
「厭んなっちゃうわね、思うことは何一つ言えやしないんだもの、――犬なら尻尾を振るところなんだけれど」
睨むような眼つきをしてから、くつくつと口ごもるように笑いだしたが伍一は妙に白けた気もちになってうしろの壁にもたれかかった。「何しろ形勢がどう変るかわからないんだし、それにうっかり」
「うっかり?」
せせら笑うように鼻をゆがめて「どう、今夜は?」と思わせぶりな表情をしてみせる百合の顔を彼はドギマギしながら何時の間にか好色的な微笑で迎えているのであった。
客は誰ひとり腰をあげようともしなかった。そこへ四、五人の会社員風の男がどやどやと入ってくると、彼等はまん中の席にひとかたまりになりぼそぼそとした調子で何かしきりに論じはじめた。女給たちは何時の間にか彼等の周囲にあつまってしきりに聴耳を立てているのであった。
*
形勢はまだどう動くかわからないような状態にあったが、しかしどう変ったにしたところでだしぬけに民衆をおびやかすような異変はこれで一段落を告げたというかんじが街の隅々から湧きあがってきた。