Japanische Klassiker mit Furigana
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やねのうえのくろねこ
屋根の上の黒猫
田中 貢太郎
Lesen Sie 屋根の上の黒猫 (やねのうえのくろねこ) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 612 Zeichen · 2 Bildschirme
昭和九年の夏、横井春野君が三田稲門戦の試合を見て帰って来たところで、その時千葉の市川にいた令弟の夫人から、
「病気危篤、すぐ来い」
と云う電報が来た。横井君は令弟の容態を心配だから、夜もいとわずに市川へ駈けつけた。そして、令弟の家の門口を潜ろうとして、何気なく屋根の上へ眼をやったところで、其処に一匹の黒猫がいて、それが糸のような声で啼いていた。瞬間横井君は、
「しまった」
と思った。それは横井君のお父さんがまだ壮い比、酒興のうえで、一匹の黒猫を刺し殺したことがあったが、それからと云うものは、横井君の家には、何か不幸なことでもあると、きっと黒猫が姿をあらわした。お父さんが歿くなった時にも、また四人の兄弟をはじめ二人の小供の歿くなったときにも、やはり黒猫が来て屋根から離れなかった。横井君はそのつどそれを見ているので、
「この野郎」
と云って、そこにあった小石を拾って投げつけた。すると猫は屋根の向う側へ姿をかくしたようであるから、家の中へ入ろうとすると、すぐまた出て来て淋しそうに啼いた。横井君は令弟のことが気になるので、もいちど小石を投げつけておいて家の中へ入った。