Japanische Klassiker mit Furigana
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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)
山の憶い出 上
木暮 理太郎
Lesen Sie 山の憶い出 上 (ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)) von 木暮 理太郎 (こぐれりたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 284.014 Zeichen · 565 Bildschirme
私は家の男達に連れられて林に行くのが楽しみであった。人並に研ぎすました大鎌を腰にさして兎や雉子を追い出しては遊んでいる。小松林の上や楢林の木の間に濃い鮮な秩父山の姿が浮き出したり織り込まれたりするのを見ると、大きな木の上に登って邪魔な枝を叩き切りなどして訳もなく喜んでいる。私の目と高い山とを維ぐ糸の上を渡り鳥の群れが往ったり来たりする。時には一羽の鷹が不図私の魂をのせて紫紺色の透明な肌を持った山の方へ矢のように飛んで行くことなどもあった。昼餉の時には茜さしたさるとりいばらの滑かな茎で箸を造る慣わしであるが、何処か山の色に似た懐しい色合を持っているのが気に入った。七つ下りになると人より先に帰って来る。此頃の晴れた日の夕暮に途々望まれる秩父山の色ほど美しい色は、どの山にも見られない。鬼が棲んでいるという浅間山、天狗が出るという赤城山、袈裟丸、奥白根、男体山、さては岩菅から上越国境の山々、皆鮮かに望まれるが一として秩父山に似た色彩を持っている山は無かった。殊に日が落ちてから三十分間許の間が最も美しい。入日の名残の光が山々からふっつり消えると、秩父山は輪廓のはっきりした透明な紫紺色の雲のようになる。