Japanische Klassiker mit Furigana
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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)
山の憶い出 上
木暮 理太郎
Lesen Sie 山の憶い出 上 (ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)) von 木暮 理太郎 (こぐれりたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 284.014 Zeichen · 565 Bildschirme
朝起きて見れば相変らず雲は低く垂れて、峡谷の風物嵐気霏々として頗る穏でない。昨日よりは夫でも幾分か模様が好いように思われたので、一行七人が黒部川の上流に向って愛本温泉を出発したのは午前九時半であった。
道は左岸の段丘の上に通じて、暫くは喧しい瀬の音も耳にしなかった。宇奈月谷を過ると桃原である。十数年前までは一面の桃林であったというが、今はもう名残の木も見当らない。此処で釣橋を渡って右岸に移った。河の水は稍赤土色を呈して大石の間を凄じく奔下している。左手は森石山だ。其山の鼻が平たく潰れて段を成している所に茶屋があった。前には田なども作ってあり、対岸の尾沼谷には橡の大木が多い。山頂は雲に掩われているが、日に照された谷の緑は燃えるように鮮かであった。一しきりヒグラシが盛に鳴いた後で、鶯の声を聞くのも夏の山路らしい感じがした。
茶屋から間もなく道は上りとなって、高い絶壁の上や横を通るようになる。其度毎に渦を巻いたり白い泡を立てたりして、矢のように駛る川がちょいちょい脚の下に瞰まれる。峡勢窄迫して、黒部川特有の廊下がそろそろ始まったのだ。
午後十二時十分、仏茶屋で暫く休んで昼食を遣った。