Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
やまぶきちょうのさつじん
山吹町の殺人
平林 初之輔
Lesen Sie 山吹町の殺人 (やまぶきちょうのさつじん) von 平林 初之輔 (ひらばやしはつのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.530 Zeichen · 37 Bildschirme
彼の視神経は忽(たちま)ち緊張し、彼の視線は急速度で旋廻(せんかい)する探照灯のように前後左右へ旋廻した。
靴がないのだ。たしかに靴脱台(くつぬぎだい)の上へ脱いでおいた筈の靴が、影も形もなくなっているのだ。念のために彼は下駄箱をあけて見たが、無論そんなところへ靴がひとりでに移転している筈はない。土間には、平常履(ふだんば)きの女下駄が一足脱ぎすててあるばかりだった。やっと回復した彼の落ちつきは、この思いがけない出来事のために根柢(こんてい)から覆(くつが)えされてしまった。しかも、気がついて見ると、たしかにしめておいた筈の玄関の戸が開けっぱなしになっているのである。
――きっと誰かこの戸をあけて、どっかの隙間から自分の行為を見ていたに相違ない。そいつが、靴をかくして自分をまごつかせてやろうとたくらんだのだ。ことによると、もうおもてには警官が待ちかまえていて、自分が一歩門外へ足を踏み出すが早いか、自分の手には鉄の手錠がはめられるような手筈になっているのかも知れぬ――こういう疑いが、稲妻のように彼の頭を横(よこぎ)って過ぎた。手頸に冷たい金属が触れたような感覚さえおぼえた。