Japanische Klassiker mit Furigana
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あずさがわのじょうりゅう
山岳紀行文集 日本アルプス
小島 烏水
Lesen Sie 山岳紀行文集 日本アルプス (あずさがわのじょうりゅう) von 小島 烏水 (こじまうすい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 138.795 Zeichen · 274 Bildschirme
西風が強いかして、傾斜の土に疎ら生えしている、丈の短い唐松や、富士薊が、東に向いて俯向きに手を突いている。紅葉の秋木も、一合五勺位から皆無になったが、虎杖は二つ塚側火山の側面まで生えている、それも乱れ髪のように、蓬々としている。
二合目で、今まで気が注かなかった山中湖が、半分ほど見えて来た、室は無論人はいないが、それでも明けッ放しになっている。なお登ると、二合二勺の室には水まで汲み込んだ樽が置いてあり、竈の側には、薪が三把ほど転がっている、防寒具を整えて来なかったが、これで焚火に事欠かないと解って、仮令天候が悪くっても、泊る宿があるという気強さが、頓に胸に溢れて来る。
もう山を浸していた霧も、気温のために、方々から湯気のように蒸騰して、砂の息蒸の匂いが何処からともなくする、二合五勺に辿り着いた頃には、近くは勾玉状に光れる山中湖と、その湖畔の村落と、遠くは函根足柄を越えて、大磯平塚の海岸、江の島まで見えた。
三合四合と登るほどに、黒砂は凝結したように、ポロポロと硬くなって、時に生れどころの解らない大霧が、斜面を這って、煙のように舞い立つこともあったが、五合へ来たときには、それも拭うように晴れて、北風が起り初めた、鳶が一羽、虚空に丸く輪を描いて山体の半分を悠揚と匝ぐって、黒い点となって、遥かに消え失せた。