Japanische Klassiker mit Furigana
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ぎゅうじん
山月記・李陵 他九篇
Lesen Sie 山月記・李陵 他九篇 (ぎゅうじん) von Nakajima Atsushi (中島 敦) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 41.608 Zeichen · 84 Bildschirme
猫は眼をさまして此方を見たが、ちょっと咎めるように鼻の上を顰めたきりで、また目を細くして寝てしまった。島民の家故、別に遠慮することもないので、勝手に上り端に腰掛けて休むことにした。
煙草に火をつけながら、家の前の大きな平たい墓と、その周囲に立つ六、七本の檳榔の細い高い幹を眺める。パラオ人は――パラオ人ばかりではない。ポナペ人を除いた凡てのカロリン群島人は――檳榔の実を石灰に和して常に噛み嗜むので、家の前には必ず数本のこの樹を植えることにしている。椰子よりも遥かに細くすらりとした檳榔の木立が矗として立っている姿は仲々に風情がある。檳榔と並んで、ずっと丈の低い夾竹桃が三、四本、一杯に花をつけている。墓の石畳の上にも点々と桃色の花が落ちていた。何処からか強い甘い匂の漂って来るのは、多分この裏にでも印度素馨が植わっているのだろう。その匂は今日のような日にはかえって頭を痛くさせる位に強烈である。
風は依然として無い。空気が濃く重くドロリと液体化して、生温い糊のようにねばねばと皮膚にまといつく。生温い糊のようなものは頭にも浸透して来て、そこに灰色の靄をかける。