Japanische Klassiker mit Furigana
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ぎゅうじん
山月記・李陵 他九篇
Lesen Sie 山月記・李陵 他九篇 (ぎゅうじん) von Nakajima Atsushi (中島 敦) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 41.608 Zeichen · 84 Bildschirme
海も――少くとも堡礁の内側の水だけは――トロリと翡翠色にまどろんでいるようだ。時々キラリと眩しく陽を照返すだけで。たまに鯔らしいのが水の上に跳ねるのを見れば、魚類だけは目覚めているらしい。明るい静かな・華やかな海と空だ。今、この海の何処かで、半身を生温い水の上に乗出したトリイトンが嚠喨と貝殻を吹いている。何処か、この晴れ渡った空の下で、薔薇色の泡からアフロディテが生れかかっている。何処か紺碧の波の間から、甘美なサイレンの歌が賢いイタカ人の王を誘惑しようとしている。……いけない! またしても亡霊だ。文学、それも欧羅巴文学とやらいうものの蒼ざめた幽霊だ。
舌打をしながら私は立上る。ほろ苦いものがしばらくの間心の隅に残っている。
湿った渚に踏入ると、無数のやどかりども、青と赤の玩具のような小蟹どもが一斉に逃げ出す。五寸ほど芽の出掛かった椰子の実の落ちているのを蹴飛ばすと、水の中にころげ入ってボチャンと音を立てる。
そういえば、昨夜、奇妙なことがあった。島民家屋の丸竹を並べた床の上に、薄いタコの葉の呉蓙を一枚敷いて寝ていた時、私は、突然、何の連絡も無く、東京の歌舞伎座の、(それも舞台ではなく)みやげもの屋(あられや飴や似顔絵やブロマイドなどを売る)の明るい華美な店先と、その前を行き交う着飾った人波とを思出したの