Japanische Klassiker mit Furigana
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ぎゅうじん
山月記・李陵 他九篇
Lesen Sie 山月記・李陵 他九篇 (ぎゅうじん) von Nakajima Atsushi (中島 敦) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 41.608 Zeichen · 84 Bildschirme
だ。役者の家の紋を散らした派手な箱や缶や手拭や、俳優の似顔の目の隈取りや、それを照らす白い強い電燈の光や、それに見入る娘たちや雛妓らの様子までもはっきり、彼女らの髪油の匂までもありありと、浮かんで来た。私は、歌舞伎劇そのものも余り好きではない。みやげもの屋などに何の興味も無いはずである。何故、こんな意味も内容も無い東京生活の薄っぺらな一断面が、太平洋の濤に囲まれた小さな島の・椰子の葉で葺いた土民小舎の中で、家の周囲にズシンと落ちる椰子の実の音を聞いている時に、突然思出されたものか。私には皆目判らぬ。とにかく、私の中には色んな奇妙な奴らがゴチャゴチャと雑居しているらしい。浅間しい、唾棄すべき奴までが。
海岸のタマナ並木の蔭のはずれまで来た時、向うから陽に灼けた砂の上を素裸の小さい男の子が駈けて来た。私の前まで来ると、立止ってキチンと足を揃え、頭が膝の所まで来るほどの丁寧なお辞儀をしてから、食事の用意が出来たことを告げた。私の泊っている島民の家の児で、今年八歳になる。痩せた・目の大きい・腹ばかり出た・糜爛性腫瘍だらけの児である。何か御馳走が出来たか、と聞けば、兄が先刻カムドゥックル魚を突いて来たから、日本流の刺身に作ったという。