Japanische Klassiker mit Furigana
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ぎゅうじん
山月記・李陵 他九篇
Lesen Sie 山月記・李陵 他九篇 (ぎゅうじん) von Nakajima Atsushi (中島 敦) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 41.608 Zeichen · 84 Bildschirme
島民の姿の見えないソンソンの夜の通りは、内地の田舎町のような感じだ。電燈の暗い床屋の店。何処からか聞えて来る蓄音機の浪花節。わびしげな活動小屋に「黒田誠忠録」がかかっている。切符売の女の窶れた顔。小舎の前にしゃがんでトーキイの音だけ聞いている男二人。幟が二本、夜の海風にはためいている。
タタッチョ部落の入口、海から三十間と離れない所に、チャモロ族の墓地がある。十字架の群の中に、一基の石碑が目につく。バルトロメス・庄司光延之墓と刻まれ、裏には昭和十四年歿九歳とあった。日本人にして加特力教徒だった者の子供なのであろう。周囲の十字架に掛けられた花輪どもはことごとく褐色に枯れ凋み、海風にざわめく枯椰子の葉のそよぎも哀しい。(ロタ島の椰子樹は最近虫害のためにほとんど皆枯れてしまった。)目に沁みるばかり鮮やかな海の青を近くに見、濤の音の古い嘆きを聞いている中に、私は、ひょいと能の「隅田川」を思い浮かべた。母なる狂女に呼ばれて幼い死児の亡霊が塚の後からチョコチョコ白い姿を現すが、母がとらえようとすると、またフッと隠れてしまうあの場面を。
あとで公学校の島民教員補に聞くと、この子の両親(経師屋だったそうだ)は子供に死なれてから間もなくこの地を立去ったということである。