Japanische Klassiker mit Furigana
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ひゃくものがたり
山椒大夫・高瀬舟
Lesen Sie 山椒大夫・高瀬舟 (ひゃくものがたり) von Mori Ōgai (森 鴎外) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 45.466 Zeichen · 92 Bildschirme
年は三十位ででもあろうか。色の蒼い、長い顔で、髪は刈ってからだいぶ日が立っているらしい。地味な縞の、鈍い、薄青い色の勝った何やらの単物に袴を着けて、少し前屈みになって据わっている。徹夜をした人の目のように、軽い充血の痕の見えている目は、余り周囲の物を見ようともせずに、大抵直前の方向を凝視している。この男の傍には、少し背後へ下がって、一人の女が附き添っている。これも支度が極地味な好みで、その頃流行った紋織お召の単物も、帯も、帯止も、ひたすら目立たないようにと心掛けているらしく、薄い鼠が根調をなしていて、二十になるかならぬ女の装飾としては、殆ど異様に思われる程である。中肉中背で、可哀らしい円顔をしている。銀杏返しに結って、体中で外にない赤い色をしている六分珠の金釵を挿した、たっぷりある髪の、鬢のおくれ毛が、俯向いている片頬に掛かっている。好い女ではあるが、どこと云って鋭い、際立った線もなく、凄いような処もない。僕は一寸見た時から、この男の傍にこの女のいるのを、只何となく病人に看護婦が附いているように感じたのである。
蔀君が僕をこの男の前に連れて行って、僕の名を言うと、この男は僕を一寸見て、黙って丁寧に辞儀をしただけであった。