Japanische Klassiker mit Furigana
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ひゃくものがたり
山椒大夫・高瀬舟
Lesen Sie 山椒大夫・高瀬舟 (ひゃくものがたり) von Mori Ōgai (森 鴎外) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 45.466 Zeichen · 92 Bildschirme
遺物だと云っても、物はもう亡くなって、只空き名が残っているに過ぎない。客観的には元から幽霊は幽霊であったのだが、昔それに無い内容を嘘き入れて、有りそうにした主観までが、今は消え失せてしまっている。怪談だの百物語だのと云うものの全体が、イブセンの所謂幽霊になってしまっている。それだから人を引き附ける力がない。客がてんでに勝手な事を考えるのを妨げる力がない。
人も我もぼんやりしている処へ、世話人らしい男が来て、舟へ案内した。この船宿の桟橋ばかりに屋根船が五六艘着いている。それへ階上階下から人が出て乗り込む。中には友禅の赤い袖がちら附いて、「一しょに乗りたいわよ、こっちへお出よ」と友を誘うお酌の甲走った声がする。しかし客は大抵男ばかりで、女は余り交っていないらしい。皆乗り込んでしまうまで、僕は主人の飾磨屋がどこにいるか知らずにしまった。又蔀君にも逢わなかった。
船宿の二階は、戸は開け放してあっても、一ぱいに押し込んだ客の人いきれがしていたが、舟を漕ぎ出すと、すぐ極好い心持に涼しくなった。まだ花火を見る舟は出ないので、川面は存外込み合っていない。僕の乗った舟を漕いでいる四十恰好の船頭は、手垢によごれた根附の牙彫のような顔に、極めて真面目な表情を見せて、器械的に手足を動かしてを操っている。