Japanische Klassiker mit Furigana
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やぎひげへんしゅうちょう
山羊髯編輯長
夢野 久作
Lesen Sie 山羊髯編輯長 (やぎひげへんしゅうちょう) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 51.441 Zeichen · 102 Bildschirme
今度こそ慥(たし)かに聞こえたに違いない。
吾輩は心細いのを通越して涙ぐましくなった。見得も栄(は)えもなくステッキの前にうなだれてしまった。この間、酔っ払った勢いでナグリ倒した救世軍士官の顔が、眼の前にチラ付いて来た。
「……ヒッ……ヒッ……ヒ……」
山羊髯が突然に妙な声を出したので、吾輩はビックリして顔を上げた。まるで山羊のような声だと思いながら……その時に山羊髯はヤッと咽喉(のど)に絡まった痰(たん)を嚥(の)み下して、蚊の啼くような声を切れ切れに出した。
「……まあ……何か……記事になりそうな話を……一つ……取って来て御覧なさい……ヒッ……ヒッ……ヒヒ……ゴロゴロゴロ……」
と云ううちに又一つ痰(たん)を嚥(の)み下して眼をショボショボさした。生きている甲斐も御座いません……と云いたいような表情をしたと思うと、そのままスウスウと煙のように立上って廊下に出た。廊下の向うの、板壁の向うの編輯室らしい方向へ消えて行った。右足が曲っているらしく非道(ひど)いビッコを引きながら……。
吾輩は呆気(あっけ)に取られてその背後(うしろすがた)を見送った。頭の芯(しん)がジイーンと鳴り出したような気がした。