Japanische Klassiker mit Furigana
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いわなのかい
岩魚の怪
田中 貢太郎
Lesen Sie 岩魚の怪 (いわなのかい) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.259 Zeichen · 9 Bildschirme
七人ばかりの村の者は、平かな岩の上に車座に坐って弁当を使いはじめた。各自が家から持って来た盛相飯は後にして、真中に置いた五升入りぐらいな飯鉢の中にある団子を指で撮んで旨そうに喫いだした。団子は煮た黒い黍団子であった。団子を喫いながら捕るべき魚の話をしていた。
「でっかい山女がいるぞ」と、一人が云うと一人は団子を呑み込みながら云った。
「ここには、岩魚が多いよ」
白い法衣を着た僧が傍へ来て立っていた。団子を撮んで口に入れようとした一人が眼をつけた。
「お坊さんじゃ」
他の者もその声に気が注いて僧の方を見た。僧の方へ背を向けて坐っていた者は、体をねじ向けて俯向くようにした。
僧は菅笠を著て竹杖をついていた。緑樹の色が薄すらとその白衣を染めて見せた。
「お前さん達は、ここへ何しに来ていなさる」と、僧は優しいおっとりとした声で云った。
「毒流しに来ている処じゃ」と、はじめに僧を見つけた一番年少に見える壮い男が云った。
「毒流し……魚を捕る毒流しかの」
「そうじゃ」
「それは殺生じゃ、釣る魚なら、餌のために心迷いのしたものじゃから、まあまあ好いとして、毒流しは、罪咎のないものまで、いっしょに根だやしにすることになるから、それは好くないことじゃ」