Japanische Klassiker mit Furigana
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とうげ
峠
土田 耕平
Lesen Sie 峠 (とうげ) von 土田 耕平 (つちだこうへい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N3. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N3 · Mittel · moderne Kanji und Kana · 3.100 Zeichen · 7 Bildschirme
「さあ、ここで一休みだ。」
とお父さんは、外套をぬいで、太郎さんを縁の上におろしました。
「あたいも下りる。」
とお母さんの背なかで、千代子さんの声がしました。
「おや、千代子はもうお目ざめだったの。」
とお母さんは笑いながら、千代子さんを縁の上におろしました。
太郎さんと千代子さんは、縁の上にならんで立ちました。今まで登ってきた道が、目の下の谷底に見えかくれして長くつづいています。
「お家はどっちだね。」
とお母さんが言いましたが、千代子さんは、首をかしげて分らぬという顔つきをしていました。太郎さんが、
「あっち。」
と遠い山のかげを指さしました。
「ここからは道が平だから、太郎はお歩きよ。」
と、お父さんが包みの中から、小さな藁草履を取り出しました。太郎さんはそれをはいて、縁からとびおりました。
「あたいも歩く。」
と千代子さんが言いました。
「おまえは歩けまいが、まあ履いてごらん。」
とお父さんは、もう一足の草履を出しました。千代子さんは、それをお母さんに履かせていただきました。夜あけ前のあのきつい寒さは、すっかり忘れたようになりました。お父さんもお母さんもニコニコして楽しそうでありました。