Japanische Klassiker mit Furigana
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しまもり
島守
中 勘助
Lesen Sie 島守 (しまもり) von 中 勘助 (なかかんすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.146 Zeichen · 37 Bildschirme
みずはか、山姫か、奇しく妙なる姿は底なしの淵の底までも照している。私はおぼえずよろめいて手にした桶をとり落した。彼女は驚いて口笛のような叫び声をあげ浦づたいに島をまわって竜宮の岬のほうへ飛んでいった。そのあとに私は温もった朴の枝に頬をおしつけ恍惚として影もない水を眺めていた。夕べをもまたず冷えてゆく朴の枝が教えるであろう、無慈悲な鉤に捕えられたのは淵にすむ鱒の子ではなくて私みずからであったことを。
夜。鴨の声がしたかとおもって空の光をたよりに浜へおりた。満月が無名樹のまばらな梢にかかって湖畔の岡の裾に霧が幔幕のようにひいている。ただひとりこの月に照されて湖のはなれ島のわずかな浜べに波をへだてて草ばかりのかなたの岡を眺めてる心は涙といえば涙である。月界の神女は昔ラトモスの山の窟にまだうら若い恋人をいだいてさめることのない甘い眠りに入らせたという。私は今ひとりここに立ってこのように憧れてるのに彼女はなぜはやくきて私を抱いてくれないのであろう。古い憧憬の蓮華は清らかな光にあってふたたび花びらをひらいた。月天子よ、私は汝のやさしい面を仰いで夜をも明すであろう、姿は苦行の婆羅門のごとく、心は渇仰の信徒のごとく。