Japanische Klassiker mit Furigana
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あるおんなのしょうがい
嵐・ある女の生涯
島崎 藤村
Lesen Sie 嵐・ある女の生涯 (あるおんなのしょうがい) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 47.846 Zeichen · 96 Bildschirme
「昼間鳴くのは、何だか寂しいものだなあし」
「三吉や、お前はあの口真似をするのが上手だが、このおばあさんも一つやって見せずか。どうしておばあさんだって、三吉には負けんぞい」
子供を前に置いて、おげんは蛙の鳴声なぞを真似して見せて戯れるうちに、何時の間にか彼女の心は本物の蛙の声の方へ行った。何処かの田圃の方からでも伝わって来るような、さかんな繁殖の声は人に迫るように聞えるばかりでなく、医院の庭に見える深い草木の感じまでが憂鬱で悩ましかった。
「何だか俺はほんとに狂にでも成りそうだ」
とおげんは半分串談のように独りでそんなことを言って見た。耳に聞く蛙の声はややもすると彼女の父親の方へ――あの父親が晩年の月日を送った暗い座敷牢の格子の方へ彼女の心を誘った。おげんは姉弟中で一番父親に似ているとも言われた。そんなことまでが平素から気になっていた。どうして四十になっても独り立ちの出来ないような不幸な娘を連れていて――それを思うと、おげんは自分を笑いたかった。彼女はそこに置いてある火鉢から細い真鍮の火箸を取って見て、曲げるつもりもなくそれを弓なりに折り曲げた。
「おばあさん――またここのお医者様に怒られるぞい」