Japanische Klassiker mit Furigana
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あるおんなのしょうがい
嵐・ある女の生涯
島崎 藤村
Lesen Sie 嵐・ある女の生涯 (あるおんなのしょうがい) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 47.846 Zeichen · 96 Bildschirme
と三吉は言って、不思議そうにおげんの顔を見ていたが、やがて子供らしく笑い出した。こういう場合に側に居るものの顔を見比べて、母を庇護おうとするのは何時でもお新だった。
「三ちゃんにはかなわない。直ぐにああいうところへ眼をつけるで」
とお新も笑いながら言って、母の曲げた火箸を元のように直そうとした。お新はそんなことをするにも、丁寧に、丁寧にとやった。
蜂谷の医院へ来てから三週間ばかり経つうちに、三吉は小山の家の方へ帰りたいと言出した。おげんは一日でも多く小さな甥を自分の手許に引留めて、「おばあさんの側が好い」と言って貰いたかったが、退屈した子供をどうすることも出来なかった。三吉は独りでも家の方へ帰れると言って、次の駅まで二里ばかりは汽車にも乗らずに歩いて行こうとした。この田舎育ちの子供が独りでぽつぽつ帰って行く日にはおげんはお新と二人で村はずれまで見送った。学校の生徒らしい夏帽子に土地風なカルサン穿きで、時々後方を振返り振返り県道に添うて歩いて行く小さな甥の後姿は、おげんの眼に残った。
三吉が帰って行った後、にわかに医院の部屋もさびしかった。しかしおげんは久しぶりで東京の方に居る弟の熊吉に宛てた葉書を書く気になったほど、心持の好い日を迎えた。