Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あるおんなのしょうがい

嵐・ある女の生涯

島崎 藤村

Lesen Sie 嵐・ある女の生涯 (あるおんなのしょうがい) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 47.846 Zeichen · 96 Bildschirme

Aozora Bunko

「ほんとに、昨日のようにびっくりしたことはない。お母さんがあんな危ないことをするんだもの。炭俵に火なぞをつけて、あんな垣根の方へ投ってやるんだもの。わたしは、はらはらして見ていたぞい――ほんとだぞい」

お新はもう眼に一ぱい涙を溜めていた。その力を籠めた言葉には年老いた母親を思うあわれさがあった。

「昨日は俺も見ていた。そうしたら、おばあさんがここのお医者さまに叱られているのさ」

この三吉の子供らしい調子はお新をも婆やをも笑わせた。

「三吉や、その話はもうしないでおくれ」とおげんが言出した。「このおばあさんが悪かった。俺も馬鹿な――大方、気の迷いだらずが――昨日は恐ろしいものが俺の方へ責めて来るぢゃないかよ。汽車に乗ると、そいつが俺に随いて来て、ここの蜂谷さんの家の垣根の隅にまで隠れて俺の方を狙ってる。さあ、責めるなら責めて来いッって、俺も堪らんから火のついた炭俵を投げつけてやったよ。もうあんな恐ろしいものは居ないから、安心しよや。もうもう大丈夫だ。ゆうべは俺もよく寝られたし、御霊さまは皆を守っていて下さるし、今朝は近頃にない気分が清々とした」

おげんは自分を笑うようにして、両手を膝の上に置きながらホッと一つ息を吐いた。