Japanische Klassiker mit Furigana
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あるおんなのしょうがい
嵐・ある女の生涯
島崎 藤村
Lesen Sie 嵐・ある女の生涯 (あるおんなのしょうがい) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 47.846 Zeichen · 96 Bildschirme
おげんの話にはよく「御霊さま」が出た。これはおげんがまだ若い娘の頃に、国学や神道に熱心な父親からの感化であった。お新は母親の機嫌の好いのを嬉しく思うという風で、婆やと三吉の顔を見比べて置いて、それから好きな煙草を引きよせていた。
その朝から三吉はおげんの側で楽しい暑中休暇を送ろうとして朝飯でも済むと復た直ぐ屋外へ飛び出して行ったが、この小さな甥の子供心に言ったことはおげんの身に徹えた。彼女は家の方に居た時分、妙に家の人達から警戒されて、刃物という刃物は鋏から剃刀まで隠されたと気づいたことがよくある。年をとったおげんがつくづくこの世の冷たさを思い知ったのは、そういう時だった。その度に彼女は悲しさや腹立しさが胸一ぱいに込み上げて来て、わざわざ養子夫婦のいやがるように仕向けて見たこともある。時には白いハンケチで鼠を造って、それを自分の頭の上に載せて、番頭から小僧まで集まった仕事場を驚かしたこともある。あんなことをして皆を笑わせた滑稽が、まだまだ自分の気の確かな証拠として役に立ったのか、「面白いおばあさんだ」として皆に迎えられたのか、そこまではおげんも言うことが出来なかった。