Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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こうせつきょうほうずえ

巷説享保図絵・つづれ烏羽玉

林 不忘

Lesen Sie 巷説享保図絵・つづれ烏羽玉 (こうせつきょうほうずえ) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 365.120 Zeichen · 728 Bildschirme

Aozora Bunko

「まだお眼ざめはねえのです」

お高は、奥の若松屋惣七の寝間へ行って、そっと障子をあけてみた。枕のうえに、死面のように蒼白い、若松屋惣七の寝顔があった。それは、憂苦のためにいっそう頬がこけて、けずったような、ほそ長い、するどい顔であった。

お高は、それに吸い寄せられるように、あし音を忍ばせてはいって行って、まくらもとにすわった。夜着のはしに手をかけたが、疲れて熟睡しているらしいので、起こす気になれなかった。すこし口をあけている顔をみつめていると、お高は、悲しくなってきた。お高は、またそっと部屋を出て、縁から庭下駄をはいて、庭へおりた。

土が、しめっているのだ。うす陽が、梅の木を照らしているのだ。梅の木には、花があった。おそい蕾もあった。蕾は、むすめの乳首のようだ。お高は、その薪のような梅の木にも、そんな萠える力があるのかと何だか恥ずかしいような気がした。

肩が重く意識されてきた。小雨だ。朝から、日照り雨が渡ってるのだ。一雨ごとのあたたかさが、来るのだ。そこにも、ここにも、春のにおいがある。お高は、鼻孔をふく雨をすいこんで、それをかいだ。

濡れるのもかまわず、その香をむさぼって、あるきまわっていると、離室の雨戸が繰られて、龍造寺主計の寝巻きすがたが、立った。