Japanische Klassiker mit Furigana
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こうせつきょうほうずえ
巷説享保図絵・つづれ烏羽玉
林 不忘
Lesen Sie 巷説享保図絵・つづれ烏羽玉 (こうせつきょうほうずえ) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 365.120 Zeichen · 728 Bildschirme
磯五は、そういって、懐中で短刀の柄を握りしめた。九寸五分の柄は、鮫の皮に金の留釘を打った、由緒ある古物であった。鮫皮の膚ざわりが、冷たくこころよかった。それは、お高の持ちものであったのを、いつからともなく磯五がもっているのだった。麻布十番の馬場やしきの家へ、お高を置きざりにして京阪へ行くときに持って出たものらしいが、磯五にしても、はっきりしないのだった。
「ふうむ、わしに用というのは」のんびりした声で、若松屋惣七がいっていた。「どういう用かな」
「おめえは、おいらの女房を横どりする気なのだろう。お高をそそのかして、おせい様の証文を持って来させて、それと引き換えに縁切り状を取らせたのは、みんな若松屋の細工だろう。お高は、いつかおれがおめえにしたように、おれにその証文を破かせて、かわりに、おいらのこの面へ手を当てたのだ」
「それは、それは、近ごろ大できでござった」
若松屋惣七が、しんから愉快そうに笑い出すと、磯五は、野犬がほえるようにわめいて、いきなり、若松屋惣七へ斬りつけていった。が、若松屋惣七は、今でこそ金勘定の町人だが、武家出で、しかも若いころは剣道の達人であった。