Japanische Klassiker mit Furigana
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こうせつきょうほうずえ
巷説享保図絵・つづれ烏羽玉
林 不忘
Lesen Sie 巷説享保図絵・つづれ烏羽玉 (こうせつきょうほうずえ) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 365.120 Zeichen · 728 Bildschirme
「ひとりでぼんやりしてはいられませんでございますもの。それに、あのお金はまだほんとに自分のもののような気がいたしませんでございます。手をつけるのがいやでございます」
「高」若松屋惣七は、伸び上がるようにして、声を低めた。
「掛川へ来ないか」
「掛川へ――」
お高は、おうむ返しにくりかえしながら、龍造寺主計の顔を思い出していた。龍造寺主計は、まだはるかにお高にこころを寄せているに相違ない。お高には、それが感じられるのだ。
お高は、若松屋惣七と龍造寺主計と、ふたりの男にはさまれることを思うと、とても掛川へ行く気にはなれなかった。行けば、この二人のあいだに、何か恐ろしい問題が起きそうな気がして、それは、どうしても避けることのできないものに思えた。
お高は、ひとり言のように答えていた。
「いいえ。掛川へ行くことはできませんでございます」
「掛川へ行けば、もうすこしものごとがはっきりいたすまで、柘植の財産に手をつけずに、やって行くことができるのだ。具足屋の仕事を手伝ってもらおう。龍造寺殿も、喜ばれるに相違ない」
その龍造寺主計が、朴訥なたましいでお高を愛しているために、お高は、掛川へ行けないのであったが、そうはいえなかった。