Japanische Klassiker mit Furigana
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こうせつきょうほうずえ
巷説享保図絵・つづれ烏羽玉
林 不忘
Lesen Sie 巷説享保図絵・つづれ烏羽玉 (こうせつきょうほうずえ) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 365.120 Zeichen · 728 Bildschirme
くずれたとき、がらり格子があいて、
「ごめんなさい」
いろは屋文次だ。
「はい、どなた?」
と女はゆったりした声、長煙管のけむりをぽっかりと吹いている。
「あの、里好先生のお宅はこちらでしょうか」
「はあ、さようでございます。どちら様から?」
鷹揚に首をまわした女、土間の文次とぱったり顔が合った。とたんに「や! この女は!」という色が文次の表情にゆらいだが、たちまち追従笑いとともに、文次は米つき飛蝗のように二、三度首を縮めておじぎをした。
「いますかえ、これ?」
となれなれしくおや指を出して見せる。
「はあいるにはいますが――」女は迷った。
この人はだいぶ親しい仲とみえる。
上げても差しつかえないんだよ、きっと。
が、「誰が来ても」といった里好のことばを思い出すと、女はぎくりとして文次へ向き直った。「いるにはいますが」と、にっこりして、「ご存じのとおり一月ほどからだを悪くして寝たきりなんでござんすよ」
「だが、いまそこから来てここへはいるのを見ましたがねえ」
「お人違いでござんしょう」
突っ放すようにいい切ると、文次の顔にちらと険が動いた。
これは油断がならない。