Japanische Klassiker mit Furigana
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こうせつきょうほうずえ
巷説享保図絵・つづれ烏羽玉
林 不忘
Lesen Sie 巷説享保図絵・つづれ烏羽玉 (こうせつきょうほうずえ) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 365.120 Zeichen · 728 Bildschirme
それに、女番頭格のお高と、それだけの一家だ。朝は、水道下の水戸様の屋根が太陽を吹き上げる。西には、牛込赤城明神が見える。そこの森が夕陽を飲み込む。それだけの毎日だ。
商売は、多く手紙のやりとりでする。若松屋惣七は、よく眼が見えない。お高が、手紙の代読と代筆をするのだ。帳簿も、お高が整理していた。
三
お高は、この金剛寺坂へ来て、六月ほどになる。誰か商売の手助けと身のまわりの世話をかねるものをとのことで、下谷の桂庵をとおして雇われてきたのだ。お高は、女にしては珍しく、相当学問もあり、能筆でもあった。何よりも、美しい女である。年齢は二十四、五だ。このお高が、若松屋へ来たときは、男世帯の殺風景な屋敷に、春がきたようだった。家のなかが、一時にあかるくなった。
おもてといっても、べつに店があるのではない。武家屋敷とおなじ構えで、男たちがごろごろしている。若松屋惣七は、例の奥まった茶室を一歩も出ない。お高は、次の間に控えていて、万事惣七のいうなりに取り計らっているのだ。日夜いっしょにいるのである。惣七とお高のあいだが、いつしか単なる女祐筆とその主人の関係以上に進んでいたとしても、それは、きわめて自然だ。