Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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へいぼん

平凡・私は懐疑派だ

二葉亭 四迷

Lesen Sie 平凡・私は懐疑派だ (へいぼん) von 二葉亭 四迷 (ふたばていしめい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 81.548 Zeichen · 161 Bildschirme

Aozora Bunko

何故彼時私は雪江さんの部屋を逃出したのだというと、非常に怕ろしかったからだ。何が怕ろしかったのか分らないが、唯何がなしに非常に怕ろしかったのだ。

生死の間に一線を劃して、人は之を越えるのを畏れる。必ずしも死を忌むからではない。死は止むを得ぬと観念しても、唯此一線が怕ろしくて越えられんのだ。私の逃出したのが矢張それだ。女を知らぬ前と知った後との分界線を俗に皮切りという。私は性慾に駆られて此線の手前迄来て、これさえ越えれば望む所の性慾の満足を得られると思いながら、此線が怕ろしくて越えられなかったのだ。越えたくなくて越えなかったのではなくて、越えたくても越えられなかったのだ。其後幾年か経って再び之を越えんとした時にも矢張怕ろしかったが、其時は酒の力を藉りて、半狂気になって、漸く此怕ろしい線を踏越した。踏越してから酔が醒めると何とも言えぬ厭な心持になったから、又酒の力を藉りて強いて纔に其不愉快を忘れていた。此様な厭な想いをして迄も性慾を満足させたかったのだ。是は相手が正当でなかったから、即ち売女であったからかというに、そうでない。相手は正当の新婦と相知る場合にも、人は大抵皆然うだと云う。