Japanische Klassiker mit Furigana
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へいぼん
平凡・私は懐疑派だ
二葉亭 四迷
Lesen Sie 平凡・私は懐疑派だ (へいぼん) von 二葉亭 四迷 (ふたばていしめい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 81.548 Zeichen · 161 Bildschirme
私は夢中だった。
俗曲は分らない。が、分らなくても、私は大好きだ。新内でも、清元でも、上手の歌うのを聴いていると、何だか斯う国民の精粋とでもいうような物が、髣髴として意気な声や微妙な節廻しの上に顕われて、吾心の底に潜む何かに触れて、何かが想い出されて、何とも言えぬ懐かしい心持になる。私は之を日本国民の二千年来此生を味うて得た所のものが、間接の思想の形式に由らず、直に人の肉声に乗って、無形の儘で人心に来り逼るのだとか言って、分明な事を不分明にして其処に深い意味を認めていたから、今お糸さんの歌うのを聴いても、何だか其様なように思われて、人生の粋な味や意気な味がお糸さんの声に乗って、私の耳から心に染込んで、生命の髄に触れて、全存在を撼がされるような気がする。
お糸さんの顔は椽側からは見えないけれど屹度少しボッと上気して、薄目を開いて、恍惚として我か人かの境を迷いつつ、歌っているに違いない。所謂神来の興が中に動いて、歌に現を脱かしているのは歌う声に魂の入っているので分る。恐らくもう側でお神さんや下女の聴いてることも忘れているだろう。お糸さんは最う人間のお糸さんでない。