Japanische Klassiker mit Furigana
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ひらがげんないとりものちょう
平賀源内捕物帳
久生 十蘭
Lesen Sie 平賀源内捕物帳 (ひらがげんないとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.367 Zeichen · 36 Bildschirme
丁度六ツ半頃、庭に盥を出させて萩の間で行水を使っていると、とつぜん隣の家で、きゃッという魂消えるような女の叫び声が聞え、続いて、
「あ痛っッ、……陳さん、あなた、何で、あたしを、こんな目に……。あれえッ、どなたか、どうぞ……」
巴になって争っているような激しい足音がして、
「……どなたかッ、……どなたかッ……」
と、言っているうちに、女の声は段々かすかになる。
乙平は捨てて置けなくなったので、手早く身体を拭いて帷子を引掛け、刀を掴み取る暇もなく素跣足のまま庭へ飛び下り、黒部の柴折戸を蹴放すようにして隣の庭へ飛び込んで行った。
沓脱石から一足飛びに座敷の中へ入って見ると、眼も当てられぬ光景になっていた。
落してまだ間があるまい。眉の跡が若葉の匂うよう。薩摩上布に秋草の刺縫のある紫紺の絽の帯を町家風にきちんと結んだ、二十二、三の下町の若御寮。
余り見馴れない、朱房のついた銀※(「木+霸」、第3水準1-86-28)の匕首で左の肩胛骨の下のあたりをの深く突刺されたまま、左脇を下にして鬢を畳に擦りつけ、
「あッ……、たれか、助けて、ちょうだい……たれか、はやく。