Japanische Klassiker mit Furigana
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ひらがげんないとりものちょう
平賀源内捕物帳
久生 十蘭
Lesen Sie 平賀源内捕物帳 (ひらがげんないとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.367 Zeichen · 36 Bildschirme
丁度その時刻には、自分は市村座で芝居を観ていたという。芝居茶屋へ訊い糺して見ると、来た時刻も帰った時刻もちゃんとウマが合っている。
茶屋へ入って桟敷へ通ったのが正午過ぎの八ツで、茶屋を出たのが終演る少し前の五ツ半。如何にも眼立つ服装をしているのだし、多分に祝儀をはずんだので、茶屋でははッきりと覚えていた。
しかし、桟敷で身装を変えて小屋抜けをするぐらいは造作もなく出来ることなのだから、これだけでは嫌疑が晴れようわけはなく、揚屋にそのまま留められたが、陳東海は、誰か自分によく似た男が自分に成澄ましてこんなことをしたのに違いないと言張って、どうしても承服しないのだった。
源内先生の気を沈ませるのはこのことなのである。
お鳥の姉婿、つまりお鳥の義兄が商用で長崎から大阪へ上り、いま川口の宿にいる。お鳥が陳東海に殺されたことはもう早文で届いている筈だが、又もや出尻伝兵衛に引張り出されてこの事件に立合った関係上、義兄の唐木屋利七にお鳥の無残な最期の様子を物語らなければならないことが情けない。利七は義妹のお鳥を自分の血を分けた妹のように可愛がっていたのだから、どんなにか悲しむかと思うと、気が滅入って思わず足の歩みものろくなる。