Japanische Klassiker mit Furigana
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あきばしょから
平野零児随想集 らいちゃん
平野 零児
Lesen Sie 平野零児随想集 らいちゃん (あきばしょから) von 平野 零児 (ひらのれいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 21.838 Zeichen · 48 Bildschirme
無論それは雲右衛門のとるところとはならなかった。しかし尾崎君は酔うとその一節を自分でうなった。その昔、私も曾我廼家五九郎一座の作者志願をしてハネられたことがある。天才にはこうした話が一つはあるものである。
中国へ去って永く帰らなかった私は、分散して預けた乏しい家財も蔵書も戦災で失っていた。福井の疎開先でも爆撃と地震で、再度焼け出され、無一物になった家内も一切を失っていた。ただ僅かに世田ヶ谷新町の親戚に預けてあった一個の本箱に、知人や友人の書画の表装をしないままに巻いてあったのが、その中に残っていた。
新世帯同様の借家を飾る何物もないので、その中から尾崎君の風格のある酔筆を撰んで額にしていたのである。
「先生、これ呉れませんか」賞めたと思うと、とたんに池田がいった。凡そ天下に私を師と仰ぐ男は後にも先にも彼一人である。もとより彼が呉れといったら、鼻くそでも何でもやることは惜しまない私であったが、一寸勿体をつけて
「そうだな、まア三十万円で売ってやろう」
「三十万円でも、百万円でも好い。それじゃ、貸して下さい」
「九十九年間か」
「二、三年だ。どうせ先生はその位しか生きとらん。