Japanische Klassiker mit Furigana
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ねんがじょう
年賀状
寺田 寅彦
Lesen Sie 年賀状 (ねんがじょう) von 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.248 Zeichen · 7 Bildschirme
友人鵜照君、明けて五十二歳、職業は科学的小説家、持病は胃潰瘍である。
彼は子供の時分から「新年」というものに対する恐怖に似たあるものを懐いていた。新年になると着なれぬ硬直な羽織はかまを着せられて親類縁者を歴訪させられ、そして彼には全く意味の分らない祝詞の文句をくり返し暗誦させられた事も一つの原因であるらしい。そして飲みたくない酒を嘗めさせられ、食いたくない雑煮や数の子を無理強いに食わせられる事に対する恐怖の念をだんだんに蓄積して来たものであるらしい。
それでも彼が二十六の歳に学校を卒業してどうやら一人前になってから、始めて活版刷の年賀端書というものを印刷させた時は、彼相応の幼稚な虚栄心に多少満足のさざなみを立てたそうである。しかし間もなくそれが常習的年中行事となると、今度はそれが大きな苦労の種となった。わがままで不精な彼にとって年賀状というものが年の瀬に横たわる一大暗礁のごとく呪わしきものに思われて来たのだそうである。
「同じ文句を印刷したものを相互に交換するのであるから、結局始めから交換しないでも同じ事である。ただ相違のある点は国民何千万人が総計延べ時間何億時間を消費し、そうして政府に何千万円の郵税を献納するか、しないかである。