Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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げんじゅつてんまたろう

幻術天魔太郎

野村 胡堂

Lesen Sie 幻術天魔太郎 (げんじゅつてんまたろう) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 45.616 Zeichen · 90 Bildschirme

Aozora Bunko

でしまったのです。

「それッ、天魔太郎、後がないぞ」

「又八郎をキリキリまいさしてやれ」

矢来のそとの数万の群衆は、いつともなく、天魔太郎のひいきになっておりました。大きいアゲハチョウを見るような、天魔太郎のうつくしいすがたと、牛若丸のような身がるさによわされて、なにがなんでもこれを負けさしたくないような心持になっていたのです。

が、天魔太郎は、竹矢来のすみに、ギュウギュウ追いつめられてしまいました。青柳又八郎の長剣が頭上高々とひらめくと、数万の群衆は、声をそろえて、ワーッとぜったいぜつめいの声をあげます。

天魔太郎は、なにを考えたか、まだ刀をぬきませんでした。初夏の太陽は、頭の上にギラギラてりつけて、又八郎の大刀は、えものをねらう毒蛇のように、空中に弧をえがいて、キラリキラリとかがやきます。

「それゆくぞ」

ついにさいごの時がきました。又八郎の一刀が、風をきってサッとくだると、天魔太郎ののしめの袖が横っとびにとびちったとおもうせつな、だれやら、大地の上にドウとたおれました。

よくみるとそれは、マゲぶしを小刀にぬわれた青柳又八郎、針でさされたこん虫のように、頭を青草の上にとめられて、あさましくも手足をバタバタさしているそばに、天魔太郎あいもかわらず空手のまま、ニコニコしながら立っているではありませんか。