Japanische Klassiker mit Furigana
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げんかくき
幻覚記
豊島 与志雄
Lesen Sie 幻覚記 (げんかくき) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.700 Zeichen · 10 Bildschirme
私は振向いて見ることも出来なかった。心身とも甘美な恍惚状態にあったのである。
やがて我に返ると、私の眼の正面には、燦然と黄金色に輝く夕陽が宙にかかっていた。私は眼をしばたたきながら、その夕陽の光にしみじみと浴した。
その時の彼女を、私は今でもはっきり覚えている。いつまでも忘れることはあるまい。恐らくそれは私の永遠の恋人なのかも知れない。
彼女がどんな顔立であるか、よく分っていながら、全然云えないのである。それは既に一種の幻影である。ヴェルレーヌも、その夢想の女が、金髪であるか褐色の髪であるか知らないと云う。ただやさしい名前で、彫像のような眼差で、今は黙してるなつかしい声の響きを持っていると云う。それはモナ・リザの微笑のように捉え難いものである。
彼女の姿は時折私の瞼の中に浮んでくる。永く変らぬ愛というものがもしあるならば、それはまた同時に永く満されない愛であり、理想の幻に対する愛であろう。私は彼女に一つの名前を欲するのであるが、如何なる名前もぴったりとあてはまることがないのである。
四
ユーゴーは「レ・ミゼラブル」の中に、人は屡々高声に物を考えると書いている。